「日本に居たら会社が潰れる」富裕層が国を捨てる本当の理由、一代で破産する相続税の罠

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「日本はいい国だ。できればずっとここで商売をしていたい」 そう願いながらも、静かに、しかし着実に日本を離れていく経営者たちが後を絶ちません。シンガポールや香港で開催される日本人経営者の集いには、名だたる老舗企業の創業者や、上場を果たした成功者たちが顔を並べているみたいです。

彼らは単に「税金がもったいない」という理由で海外移住をしているのではありません。もっと切実な、「日本に居たままでは、代々続く会社を維持することが物理的に不可能である」という冷酷な現実に直面しているのです。

なぜ、日本で成功し、利益を出せば出すほど「破産」が近づくのか。そして「会社に資産を残せば安心」という常識が、なぜ今の日本では通用しないのか。その残酷なカラクリを解説します。

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ここまで5回にわたって、シンガポールに起業家・富裕層が集まるマクロトレンドについて解説をしてきましたが、今回からはシンガポールに拠点をおく日本人の各個人に焦点をあてて、シンガポールの最新事情を紹介していきたいと思います。

会社を太らせるほど、相続の「死刑宣告」が近づく

多くの人はこう考えます。「個人でお金を持たず、会社に資産を残しておけば、会社は生き残れるのではないか?」と。しかし、日本の税制はそんなに甘くありません。

「貯金箱」が重くなるほど、重税が課される

オーナー企業の場合、社長が持っている財産とは「現金」ではなく、会社の所有権である「自社株」です。会社が利益を出し、内部留保(貯金)を蓄え、立派な工場や土地を持てば持つほど、税務上の「自社株の評価額」は跳ね上がります。

たとえるなら、「あなたが中身の詰まった『貯金箱(会社)』を持っているとします。中にお金を入れれば入れるほど貯金箱自体の価値が上がり、相続の時には、その『貯金箱の重さ』に応じた税金を、貯金箱を壊さずに個人の財布から払えと言われる」ような状態です。

時価総額300億円と評価される優良企業を相続する場合、最高税率55%が適用され、約165億円の納税義務が発生します。これを「個人のポケットマネー」で即座に払える後継者が、日本にどれほどいるでしょうか。


「親子3代」どころか「1代」で破産するカラクリ

今の日本では、もはや「3代で財産がなくなる」という悠長な話ではありません。

たとえ無借金経営の優良企業であっても、「たった1代の相続」によって、会社そのものが消滅するリスクがあります。

なぜなら、相続税は「現金」で納めるのが原則だからです。前述の通り、自社株の評価が高まり、数十億、数百億円という税金を突きつけられたとき、手元に現金がなければ、経営者は「先代から受け継いだ土地や工場」を売却して、無理やり現金を作るしか道がなくなります。

しかし、ここでさらなる絶望的な罠が待ち受けています。

領収書のない「100年前の資産」という地雷

特に老舗企業にとって致命的なのが、資産売却時に発生する「取得費」の問題です。納税資金を作るために、100年以上前から守ってきた土地や工場を売ろうとしても、当時の領収書(いくらで買ったかの証明)など残っていないことがほとんどです。

日本の税制では、取得価格を証明できない場合、売却価格のわずか「5%」で手に入れたものとみなされます。つまり、残りの「95%」はすべて儲け(利益)だと判断され、そこに重い譲渡所得税が課せられてしまうのです。

例えば、165億円の相続税を払いたいとします。その現金を捻出するために会社の資産を売却しようとすると、この「5%ルール」のせいで多額の譲渡税が引かれるため、実際には400億円近い資産を処分しなければ手元に165億円が残りません。

納税のために、社屋も、工場も、機械もすべて売り払う。これで、会社を維持するための設備も運転資金もすべて失われ、1代で廃業に追い込まれるということになるのです。

No.3258 取得費が分からないとき|国税庁

会社のお金を使えば「税金のダブルパンチ」

「個人にお金がないなら、会社のお金を使えばいいじゃないか」と思うかもしれません。しかし、ここにもう一つの罠があります。

会社から相続税のために1億円を引き出そうとすれば、それは会社から個人への「配当」や「報酬」とみなされ、最大約50%の所得税がかかります。

たとえるなら、「100円の税金を払うために、会社から200円引き出すと、100円が所得税で消え、残りの100円でようやく相続税が払える」という状態です。つまり、会社のお金で解決しようとすると、納税額は実質的に倍増します。

この「税金の無限ループ」があるため、真面目に日本で利益を積み上げてきた経営者ほど、相続の瞬間に詰んでしまうのです。


なぜ「海外移住」が唯一の生存戦略なのか

「海外への移転は、単なる利己的な租税回避である」という批判は、実態を無視した暴論です。経営者たちにとっては、移住は「節税」ではなく「事業継続のための防衛策」でもあるのです。

世界との圧倒的なルールの差

香港やシンガポールなどアジア諸国には、相続税そのものが存在しない、あるいは極めて低いという特徴があります。

国・地域相続税(最大)贈与税(最大)
日本55%55%
台湾20%20%
韓国50%50%
中国なしなし
香港なしなし
シンガポールなしなし
マレーシアなしなし
インドネシアなしなし
インドなしなし

この環境下で日本で命懸けのビジネスを続けようと思うでしょうか?

日本で稼げば稼ぐほど国に持っていかれ、死ぬときには残りの半分も持っていかれる。これでは優秀な人材や資産が海外へ流出するのは、避けられない自然現象です。

たとえるなら、「どれだけ練習して試合に勝っても、賞金のほとんどをリーグに没収され、さらに引退時には道具まで取り上げられるチーム」に、一流選手が残り続けるはずがないのと同じです。

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日本に居座るリスク:政府が選んだ「衰退」への道

今の日本の税制は、暗にこう言っているのです。 「儲からない、生産性の低い会社だけが日本に残りなさい。成長する会社は、どうぞ海外へ行ってください」

実際、利益が出ていない会社は評価額が低いため、相続税で苦しむことはありません。しかし、そんな会社ばかりが残った国に未来があるでしょうか。競争力がなくなり、物価だけが上がり、優秀な若者は海外へ出稼ぎに行く。これが「重税国家」の末路です。

僕はこの状況を見て、強い危機感を覚えます。かつて「ものづくり大国」として世界を席巻した日本が、自らの税制によってその首を絞めているのです。


結論:生き残るために「仕組み」を学べ

自分たちがこの日本で、あるいは日本を超えて生き残るために必要なのは、もはや「良いものを作る」という職人気質だけでは足りません。

政府がどのようなルールで自分たちの資産を奪おうとしているのか、その「税の仕組み」を徹底的に勉強し、適応する能力が必要です。

  • 事業承継税制などの特例を使い倒すのか
  • 上場によって株式に流動性を持たせるのか
  • あるいは、拠点を海外に移してグローバルに戦うのか

選択肢は常に自分たちの手の中にあります。日本は素晴らしい国ですが、今の税制が続く限り、成長を志す経営者にとっての「地獄」は加速し続けるでしょう。

大切なのは、国が守ってくれると信じることではなく、「どこでどう生きるか」を、自らの知識で選び取ること。それが、激動の2026年を生き抜くための、唯一にして最大の武器なのです。


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