【中国経済の闇】人民元がバク増しても景気が冷え切っているのはなぜ?「ゾンビ企業」という時限爆弾の正体

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「お金が増えれば、景気は良くなる」 そんな経済の常識が、今、隣国・中国で音を立てて崩れ去っている。

自分たちが普段ニュースで耳にする「中国経済」の姿は、最先端のAIや宇宙開発、そして人型ロボットが完璧に動くハイテク国家のイメージかもしれない。しかし、その足元では、どれだけお金を投入しても経済が活性化しない、まるで「底の抜けたバケツに水を注ぎ続ける」ような異常事態が起きているのだ。

今回は、爆速で増え続ける人民元の謎と、その裏側に潜む「ゾンビ企業」という構造的な血管、そして自分たち日本人がそこから何を学ぶべきかについて、深く掘り下げていきたい。

経済の「教科書」が通用しない、中国のミステリー

まず、基本的な経済の仕組みをおさらいしておこう。 通常、世の中に出回るお金の量(これを専門用語で「M2」と呼ぶ)が増えるのは、経済活動が活発な証拠だ。

  1. 景気が良くなる
  2. 商品が売れる
  3. 企業が「よし、もっと工場を建てよう!」と銀行からお金を借りる
  4. 銀行の貸し出しが増え、世の中にお金が流通する

これが健全な流れだ。ところが、今の中国はこの流れが完全にバグっている。

実際に中国の街中を見てみると、どうだろうか。 かつては活気があった都市部でも、今や「シャッター商店街」が激増している。実店舗の経営は立ち行かず、特に高級レストランなどは次々と倒産に追い込まれているのが現実だ。失業率は高止まりし、ボーナスカットどころか、給料さえまともに支払われないという悲鳴が各地で上がっている。

それなのに、統計上の「お金の量(M2)」だけは、恐ろしい勢いで増え続けている。 「街は冷え切っているのに、通貨だけはバク増している」 この奇怪な現象の答えは、銀行が貸し出している「お金の行先」にある。

利益ゼロ、借金で生き延びる「ゾンビ企業」の恐怖

銀行がせっせと人民元を貸し出している相手、それは投資に意欲的な成長企業ではない。実は、その多くが「ゾンビ企業」と呼ばれる、自力では生きられない巨大企業に吸収されているのだ。

ゾンビ企業とは、本業の儲け(利益)では到底やっていけないのに、借金によってのみ延命している企業のことを指す。

たとえば、中国の鉄鋼業界がいい例だ。 通常、鉄鋼メーカーなんて一国に数社あれば十分だが、中国には掃いて捨てるほど存在する。品質も低く、国際競争力もない。それでも、なぜ潰さないのか? いや、「政治的に潰せない」のだ。

  • 地元の雇用: 潰せば数万人、数十万人が一気に失業し、社会不安が起きる。
  • 共産党の利権: 巨大企業は幹部たちのポストの宝庫。
  • 地域の経済: その企業があるからこそ、周りの飲食店や商店がなんとか持っている。

たとえるなら、「すでに寿命を迎えているのに、生命維持装置(借金)を最大出力にして無理やり心臓を動かし続けている状態」だ。

「100万円借りて105万円返す」の地獄ループ

ここで恐ろしいのが、金利の仕組みだ。 ゾンビ企業は利益が出ていない。しかし、銀行から借りたお金には利息がつく。

  1. 最初の年に、延命のために100万円借りる(金利5%とする)。
  2. 1年後、返すお金がないので、元金+利息を払うために、また銀行から借りる。
  3. 今度は105万円の借金になる。
  4. さらに翌年、その105万円の利息を払うために、また借りる……。

こうして、銀行の「貸出総額」は雪だるま式に増えていく。これがM2(お金の総量)をバク増させている正体なのだ。 このお金は、新しい技術を生むためでも、景気を刺激するためでもない。ただ「ゾンビを死なせないためだけ」に使われている。まさに、経済的な「死に金」である。

なぜ中国でゾンビ企業が減らないのか
中国では政府や銀行のサポートなしに生き残れない「ゾンビ企業」が増殖中だ。その構造は過剰生産問題と表裏一体で、解決は容易ではない。

中国共産党が「AI・ハイテク」に固執する真の理由

ここで自分たちは、一つの疑問に突き当たる。 「そんなにゾンビ企業がヤバいなら、さっさと整理すればいいじゃないか」と。

しかし、前述した通り、それは政治的に不可能に近い。一気にメスを入れれば、中国全土で暴動が起きかねないからだ。 そこで中国共産党が描いている起死回生のシナリオが、「イノベーションによる逃げ切り」だ。

ゾンビ企業を抱えたまま、一方でAIやロボット、宇宙開発といった「稼げる次世代産業」を爆速で育てる。そして、そこから得られる莫大な利益を使って、ゾンビたちの膿を少しずつ、バレないように薄めていこうという戦略だ。

自分たちの目に入ってくる「中国のハイテク技術すごい!」というニュースの裏側には、「この新産業が成功しなければ、国がゾンビの山に飲み込まれて沈んでしまう」という、切実な、あるいは悲痛なまでの危機感が隠されているのだ。

日本人が陥る「金融政策」という名の迷宮

さて、ここまで中国の「ゾンビ企業と人民元バク増のミステリー」を見てきたが、これは決して遠い国のエンターテインメントではない。自分は、この状況を鏡として自分たち日本の現状を振り返るべきだと確信している。

最近の日本で経済の議論といえば、猫も杓子も「金利がどうなるか」「円安がどこまで進むか」といった話ばかりだ。確かに、日銀の金融政策決定会合の結果は重要だ。しかし、自分に言わせれば、金利や為替の議論に終始しているうちは、日本経済の再生は遠い。

なぜか? それは、金利の操作というのは経済における「体温調節」に過ぎないからだ。

たとえるなら、「病気で寝込んでいる患者の部屋のエアコン設定(金利)を25度にするか26度にするかで、家族全員が大論争している状態」だ。 部屋の温度を1度変えたところで、患者の病気そのものが治るわけではない。本当に議論すべきは「どうやって体力をつけ、外で稼げる体に戻るか」という治療方針のはずだ。

金利0.25%の攻防は「本質」ではない

日本でも「金利を上げれば景気が冷え込む」「上げなければ円安で物価が上がる」という議論がループしているが、コントロールされている金利の幅は、実際にはごくわずかだ。その微調整だけで日本経済が急激に活性化したり、逆に絶望的な不況に陥ったりすることはありえない。

金融政策に過度な期待を寄せるのは、ある種の「思考停止」ではないか。自分たちが本当に向き合うべきは、金利の数字ではなく、「国全体の稼ぐ力(産業競争力)」そのものなのだ。

知識の共有が「稼ぐ力」をアップデートする

中国が「ゾンビ企業を抱えながらもAIやロボットに社運を賭けている」のは、彼らが「イノベーションしか現状を打破する道はない」と本質を理解しているからだ。彼らにとってハイテク投資は、単なる流行ではなく、国家の生存戦略なのである。

では、自分たち日本はどうあるべきか。 自分が必要だと考えるのは、専門家だけの議論ではなく、「これからどの分野が世界で伸び、日本がどこで立ち回るべきか」という具体的でオープンな議論だ。

たとえば「AI」という言葉一つをとっても、多くの日本人は「なんだか凄そう」「仕事が奪われるかも」といった漠然としたイメージで止まっている。しかし、AIが今後の製造業、物流、医療において具体的にどう「利益」を生み出すのか。その中で日本のどの技術が強みになるのか。こうした具体的な知識を、自分たち一人ひとりが広く共有することこそが、成長の原動力になる。

「金利の話」は誰でも参加しやすい。しかし、「どの産業をどう育てるか」という話は専門知識が必要で、意見をまとめるのが難しい。だからこそ、政治もメディアも避けて通りがちだ。だが、そこを避けていては、自分たちの豊かさは守れない。

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自分の視点:ゾンビを恐れるな、未来を創る手を止めるな

中国の現状を「構造的問題だ」と切り捨てるのは簡単だ。しかし、自分はこう思う。 「ゾンビを抱えているのは、日本も同じではないか?」と。

日本にも、補助金や低金利に守られ、もはや自力で成長する意欲を失った企業や仕組みが溢れている。中国との違いは、それが「爆速なM2増加」という極端な形で現れていないだけだ。

自分たちがすべきことは、過去の構造を守ることに汲々とするのではなく、新しい産業への「知的な投資」を加速させることだ。 たとえ今の景気が低迷していても、AI、クリーンエネルギー、バイオ技術といった「稼げる分野」に対して、国民全体が共通のビジョンを持って向き合うことができれば、必ず道は拓ける。

結論:数字のミステリーに惑わされないために

中国の「人民元バク増と景気低迷」というミステリーは、自分たちに重要な教訓を教えてくれている。

  • お金を増やすだけでは、経済の「病」は治らない。
  • 「ゾンビ企業」という負の遺産は、成長の果実でしか相殺できない。
  • 議論すべきは「お金の操作(金融政策)」ではなく「稼ぐ力(産業戦略)」である。

中国がゾンビ企業という時限爆弾を抱えながら、必死にハイテクという「光」を追い求めている姿を、自分たちは決して他人事として見てはいけない。

自分たち日本人も、目先の金利や為替という「体温計の数字」に一喜一憂するのは、もう終わりにしよう。それよりも、自分たちの手が、技術が、知識が、明日の世界でどう価値を生み出せるのか。その具体的な議論を、今日から始めていくべきだ。

経済の未来は、中央銀行の部屋の中ではなく、自分たちの「稼ぐ意志」の中にこそあるのだから。


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